SEA-FOREST 海の中の森

 最近、とあるごとに腰とか背中の筋を痛めることが多くなり、ある人から勧められてサプリメントを飲むようになった。そのサプリメントの主成分はなんと「ヒジキ」の粉末。たしかに口の中に入れた途端、あの潮の香りと称される海藻の匂いがポワンと口の中に広がる。味はどうあれ、ヒジキの中には人間の体内にいい成分がたくさん含まれているらしい。食物繊維はゴボウの5倍も含まれ、骨の強化に役立つミネラルも多く、骨粗そう症などにも効果があることが知られていたりする。確かにそれを飲むようになってから肩こりや背筋の痛みが気にならない程度まで消失。ふだんはワカメや海苔程度のおつきあいだったが、そんなこんなで海藻と妙に親密になった今日このごろである。
 さて、このように人間の体内でも大いに役立つ海藻。これが海の中でも大いに活躍しているそうだ。まずは酸素の供給だろう。陸上における植物と同様に、光合成などによって酸素を放出する。また、サカナたちや他の生き物たちにとっては重要な隠れ家になる。特にサカナたちの産卵期には、卵が海藻に生みつけられることも少なくない。また孵化した稚魚たちにとってみても藻場は隠れ蓑にになり、外敵から身を守ることにも利用している。おまけに春の潮が差し込んできて海藻の勢力が落ちてちぎれて沖に流れ出す。するとちぎれた海藻に隠れて稚魚たちは沖に出る。そして大きく育つと再び浅い藻場で産卵するというサイクルが形成されている。おまけに、海藻はサカナや貝類にとっても重要な食料となりうる。


海女さんたちの話では、最近アワビやサザエが採れなくなって来ているらしい。それは海藻が昔に比べて大幅に減ったことが原因のようである。「昔は潜るときに邪魔に思ってた海藻だけど、海藻が減るのと一緒にサザエやアワビも減っちゃったよ」海女さんのこの言葉が示すように、海の生き物たちにとっての藻場は、陸上の森林と同じ役割を担っているのではないだろうか…。
 さらには、海中の汚れなども吸収し、きれいな海水に浄化してくれる役目も持っているということが最近の研究でわかってきたそうだ。
 陸上では土地開発のために森林が壊され、海中では汚染や埋め立て、磯焼けなどで藻場が破壊されている。まったく同じことがサンゴにおいても言えるだろう。つまり地球の両端から地球を浄化し、活性化させるエリアをどんどん自らの手で削ってしまっていることになる。このままでは、本当にこの地球が住めない惑星になっていってしまうだろう。これからは森林の再生はもちろんのこと、積極的に藻場を回復させるような活動が絶対的に必要になってくるはず。ボクたちダイバーにも、何か手伝えることはないのだろうか?

今回は、今月のギャラリーでも海の中の森をテーマに作品を組んでみました。是非ごらんください。

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