柴犬・カイがうちにやってきた その1

 「お父さん、あの子犬欲しい!」
「どうするアイフル」のコマーシャルではないが、うちの6歳になる有紀(ゆうき)がそんなことを口走った。見ると、ウエルシュコーギーという種類の子犬。以前、キョンキョンの紅茶のCMでこのイヌがメジャーデビューし、人気をはくしている種類だ。耳が大きくたっていて、表情もかわいい。また胴長で愛嬌もある。サイズも小型犬から中型犬の中間に位置している。しかし、価格は10万円から16万円。ボクとしては、とても買えたものではない。
「よぉしっ、お父さんが近くの獣医さんに頼んで、雑種の子犬をもらってくるからな」と威勢良く言ったものの、いざ聞いてみると今の時代は首都圏では雑種は逆に手に入りにくいとのことだった。昔は簡単に手に入ったのに…。
 それからは、家族総出でイヌ探し。カミさんはインターネットでいろいろあたり、ボクはペットショップを見に行ったり、情報を集めたり…。結論としては、柴犬かウエルシュコーギーで、予算の上限は6万。この中にあてはまるのがいたら…ということになった。
 そんなある日、近くのペットショップでウエルシュコーギー6万円というのが出た。さっそく見に行ってみると、鼻面に変な斑点模様があり、イヌとしてはちょっと不細工な顔つき。やはりイヌの世界も、美男子、美女は値段も高く、不細工だととたんに値が下がる。なんかかわいそうになり、おもわず手を打ってしまいそうになったのだが、結局は手を打てずに終わった。(このイヌは、現在も売られているがとうとう2万円まで下がり、おまけにかなり大きくなってしまっていた)
 ボクのペット関係に強い友人がいて、彼にだいぶ前にいいイヌがいたら知らせてねと頼んでおいたのだが連絡も無く、ボクは彼のことをあてにすることもなく、さらにいろいろと調べたりしていた。たまたま知り合いの獣医さんが4万で柴犬のメスが手に入るとの情報を得て、それを見に行くことに決まりそうになった矢先、まるでふらり寅屋に戻った寅さんのようにボクの友人から電話が入った。
「今、オレ、奄美大島にいて明日帰るんだけどさ、帰ったらちょうど届くはずなんだけど柴犬のいいの手に入れたよ」
 以後、ボクと彼との会話である。
「なにっ、手に入れたということはもう買ったということか?」
「ああ、スゲエいいイヌで、これしかないと思ったから手を打っといたよ。コンテストとかにも出せるぐらいいいイヌで、6万で頼み込んできた。もうこんなイヌ手に入らないよ」
「おいおい、4万っていうイヌいたから手を打つとこだったんだけど…」
「そっかぁ…、いいイヌなんだけど、他の誰かに話するか…」
 彼のあまりの落胆の声に、ボクは4万の話を丁重に断りをいれ、彼が手に入れてきた柴犬をそのまま引き取ることにした。ボクはなにもコンテストに出すつもりなどないし、性格のいいイヌならそれでよかったのだが。
 そんなこんなで、うちの家族の一員に柴犬・カイ(イヌの名)が加わった。生後40日。夜泣きしたり、家の中におもらししたり、自分のしたウンチを食べちゃったり、輸入物のいいエサを買って来たり…。なんだかんだで大変だが、カイを中心に家族がさらにまとまってきた。これからなにか楽しいことになりそう。家族全員でカイを大事に育てたいと思っている。

BACK