湘南の海
ボクが湘南の海にこだわるワケ その2


↑モルジブの海。たしかに透明度も高く、暖かい海で、まさに楽園を感じる海だった。そんな素晴らしい海外の海に行くことは賛成である。でも、海外の海に行く前に、もっと日本の海を知って欲しい。自分たちの海がどれほど素晴らしい宝なのかを知って欲しい。そうすれば、ニッポンに住むひとりひとりが、もっと海を思いやる気持ちが芽生えるはず。それこそが、山も川も含めた環境を考える第一歩につながると考えているからだ。
 ボクが湘南・三浦の海にこだわる、その第一の理由は前号に掲載したが、まだまだその理由は尽きない。
 ボクの撮影のコンセプトは、日本の海。この南北、東西に伸びるヘンテコリンな島国・ニッポン。形も変だが、そこに住んでいる人も自分を含めてヘンテコリンな奴ばかりだし、ヘンテコリンな人たちが国を治めようとするから政治も社会もヘンテコリン極まりない。
 しかし、しかしである。その周囲は世界有数の豊かさをたたえた海に囲まれている。黒潮、親潮がおりなす豊かな世界がここにあるのだ。北は流氷も見られるし、冷たい海に棲む生き物たちも数多く見られる。


 南に行けば、サンゴ礁が広がり、カラフルなサカナたちの楽園もある。ひとつの国の中で、そこまで大きな変化が見られる海は他にはないはずである。
 そんな貴重な海をよく見もしないで、海は海外が素晴らしいなんて思い込んでいる人たちが実に多い。たしかに南の海は暖かいし、気持ちもいいのもよくわかる。でも、これって自分たちの住んでいる地球をよく知りもしないで、宇宙へ住みたいなんて言っているのと同じことなんじゃないかと思うのだ。「隣の柿は甘い」主義とでも言うのかな。自分たちの身の回りとか足元とかをよく見ずに、すぐに隣のものに目移りして、そっちがいいと思ってしまう。そんな傾向が強いのではないだろうか。 おおっと話がそれてしまった。この素晴らしいニッポンの海をみんなに知ってもらいたい。もちろんニッポンに住む人たちに一番知ってもらいたいし、それこそ世界の人たちにも知ってもらいたい。そんなメッセージをボクは生きている限りは発信し続けようと思っている。

↑湘南の海は、真冬はそれこそ沖縄顔負けの透明度の高い海となるが、その時期を除いては、こんなバスクリンのような色をしていることも少なくない。しかし、このわびさびを感じてしまうような海こそ、まさに日本の海だと思うのである。そして、そこに棲む生き物たちのバラエティーの豊富さ。そのような目で見ていくと、とにかく奥の深い世界があるのだ。ボクは、湘南を発信基地として、日本の海の素晴らしさを伝えていきたい。そう考えている。

 それで、その発信源をどこにするか考えた。海に関しては湘南が発信基地になっていることが多い。例えば、マリンスポーツについては、逗子が日本のヨットの発祥の地。サーフィンは茅ヶ崎が日本のメッカとされている。また、音楽で考えてみても、ずいぶん昔にハワイアンっぽいエレキギターを使ったサウンドが流行った頃には、そんな曲を湘南サウンドと総称された。サザンやユーミンの曲で海を歌った歌詞の中には堂々と湘南の地名が出て来たり、ホテルやお店の名前すら登場する。つまり、イメージ的に海を語る際には、湘南はまさに全国区のエリアなのである。

 もちろんボクの生まれ育った横浜から近く、小さい頃から湘南の海で海水浴や釣りで親しんだエリアであり、自分の水中撮影もここから始めたという原点の地ということも含め、湘南から日本の海を伝えたい。そう考えている。そのためにまずは湘南・三浦そして大きく捕らえるなら相模湾という切り口で何か残さなければならなかった。
 そんな小さな夢が、もうまもなくかなうのである。

 当ホームページのNEWS欄にも記載しましたが、今年の2月20日に講談社から"講談社プラスアルファー文庫"『魚眼散歩 湘南・三浦・相模湾の海中カメラ紀行』が発売予定。ちなみに本体価格1000円。文庫サイズで、カラーとモノクロページが交互に入った本の作りになっています。城ヶ島から始まり、宮川湾、三戸浜、芦名、葉山、逗子、江ノ島、茅ヶ崎、根府川、真鶴、熱海、初島、宇佐美、伊東、大島というように、三浦半島から湘南、相模湾の海岸線に沿ってボクが潜り歩いたフォトルポルタージュ的なものです。もちろん、それぞれの水中写真があますところなく盛り込まれていますし、各地のダイビング情報もいれてありますのでガイド本としても使えます。
 このエリアで見られる生物の図鑑としても見れますし、巻末には、水中写真の撮り方などのハウツーも掲載。マルチに楽しめて、役立つ本にしあがる予定です。1/1現在、色校といって試し刷りがあがってきていて、それをチェックしている段階。カバーもまもなく発表できそうです。おいおいNEWSで詳しく報告させていただきます。

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