写真展ちょっといい話

 3月24日。大阪での開催を最後に、写真展「海宇宙U エイリアンの逆襲」が終了した。昨年の夏に銀座キヤノンサロンから始まり、名古屋、福岡、そして大阪梅田の各会場を巡回展示。特に銀座と大阪は毎日のように会場につめた。
 会場につめていて何が面白いかといえば、来てくれたお客さんのリアクションがもろに感じられること。先日の大阪でも、奈良から来られたおばあさんが、ある1点のパネルの前で笑い転げた。もう笑いすぎて涙まで流すほど。こちらまでなんだか「もらい笑い」。「キビレミシマ」の顔のアップだったのだが、この顔がおかしくてたまらなかったのだそうだ。そんな素直なリアクションがビンビンと伝わってきて、とても面白いのである。
 また銀座では、写真展に来られたあるお母さんから後日お礼の手紙をいただいた。そこには次のようなことが記されていた。
 写真展会場には、娘さんと一緒に来られたのだそうだ。娘さんはちょうど幼稚園の年中さん。だが、水が嫌いで、お風呂でも水しぶきが2〜3滴顔にかかっただけでも大泣き。母親としてはスイミング教室にでも通わせて、少しでも水に親しむようなことをさせたいと思っていた。しかし、どんなに勧めても絶対に行かないの一点バリ。欲しいおもちゃを買ってあげるからとエサで釣ろうとしてもダメ。強く言えば嫌がって泣き出すし、スイミングに通わせるのは諦めようと思っていた。
 ところがある日、娘さんは急に自分からスイミング教室に通いたいと言い始めた。母親も最初は冗談だと思ったらしい。だが本人は真剣。それはなんと、この「海宇宙U」の写真展を見たことが原因。海の中にポケモン(ポケットモンスターの略。子供たちの超人気アニメ)がいる、彼女はそう感じた。こんなにかわいいポケモンたちがいるのなら、自分も海の中に入っていきたい。泳げるようになって、本物のポケモンを海の中で見てみたい。5歳の子の発想と言ってしまえばそれまでかもしれないが、自分の作品がその娘さんに強い意思を与えたのだ。
 手紙の最後にはこう書かれていた。
「親がどんなに言っても絶対に受け入れてもらえなかったのに、写真を見ただけで娘は自分から率先してスイミングに行きたいと言ってくれた。何も語らない写真なのに、親の言葉よりも説得力を持っている。今回の写真展では、写真の持つそんな偉大さも知りました。楽しい写真展をどうもありがとうございました…」
 こんな写真家冥利につきる話もないだろう。

大阪梅田キヤノンサロンは、昨年の夏に新装された会場。地下一階なのだが、ガラス張りのため、外光が入って明るく、最高の場所だった。
写真は会場に来られた鈴木清司氏撮影

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