デジタルと銀塩。これからどうなるの?

 ちまたでは、デジタルカメラが急速に浸透してきている。パソコンへの画像の取り込み、携帯電話にまでその機能が盛り込まれた機種まで存在している。もちろん水中写真においても、コンパクトなデジタルカメラを片手に潜るダイバーも急増。エキジットした後も、まるで携帯電話を操作しているかのように、ピコピコとカメラのスイッチをいじっているダイバーも多く見られるようになった。
 正直な話、ボクにも今後の展開が読めなくなってきている。デジタルカメラに塗り替えられてしまうのか、銀塩の世界はすたれてしまうのか…。
 おそらく映画やCF(コマーシャル)の世界と同じ道をたどるのではないだろうか? ボクはそう考えている。ほんのちょっと昔、映画やCFはすべてフィルムで撮影されていた。それだけに撮影や編集は大掛かりであり、フィルムに映像を焼きつける作業そのものが職人芸に近いものだったらしい。しかし、ビデオ収録のハードとソフトの両面が急激な進化を遂げ、TV番組はもちろんのこと、ドラマ収録や映画の撮影、CF撮影にいたってもVTR使用のその割合は大半といっても過言ではない。

昨年の秋に発売になったキヤノンEOS D-30というデジタル一眼レフカメラ。新し物好きなトヨ〜ダは、さっそくJUNONでハウジングを作り、海の中に持って入って撮影してみた。(作品は当HP DIGITAL WORLDをご覧ください)まだマクロレンズ用ポートしかできていないが、今月中旬にはワイドレンズ用ポートも完成予定。さらに面白くなってきそうだ。

だが、フィルムならではのディテールにこだわり、フィルム撮影で行われているものもある。例えば、サッポロビールのCF。卓球編や雪合戦編の超スローモーションなどは、フィルムによる高速度撮影でなければ表現できない世界だという。つまり、その場合場合によって使い分けるということなのだ。
 この推移を見ると、おそらくスチル撮影の世界もデジタルが大幅に入りこんで来るのではないだろうか? 大判カメラでのコマーシャル撮影、写真展などのクオリテイーをつきつめた作品撮影の場合にはフィルムで。雑誌や書籍、新聞などの紙媒体の印刷には、今後はデジタルによるデーター入稿へとってかわる気配が濃厚だ。現に、月刊デジタルカメラマガジン(インプレス社刊)にボクも作品発表をする予定だが、すべてデーター入稿という世界。今までのようにフィルムのやりとりはない。MOにデーターを入れて渡す、もしくは電話回線で送信する。なんかあっけない感じもしたが、これでボクの入稿作業は終わる。経費節減、人件費削減という時流から考えれば、この流れは本流になって行きそうだ。
 あと、撮影という立場、特に水中撮影において、デジタルカメラは最高の武器になるだろう。今までフィルムなら36枚しか撮れない。水中でのフィルム交換は不可能だし、水中での感度の変更などは一部のカメラでしかできなかった。それが、デジタルならスイッチの操作ひとつで、感度変更もできるし、色温度の設定変更もできてしまう。また、記憶メディアを大容量にすれば、900枚なんてとんでもない数の撮影もできてしまう。(ボクの場合は128MB使用だから90枚程度)さらに、撮影したものを水中で確認できる。これは今までに想像し得なかった世界なのである。もちろん現像も必要ない。海から上がったら、パソコンを介してすぐにデーターを飛ばせるし、周囲の人に見せてあげられることもできる。現に、先日、西表島で開催していたフォトセミナーでは、つい先ほど撮影した作品をテレビモニターですぐに見せることもでき、大好評だった。
 おそらく、銀塩だのデジタルだのという区別はなくなる。純粋に表現の差による使い分けが存在する時代になっていくのだろう。

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